【総べて幽(かそ)けき寂滅(ほろび)の光】

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明治・大正期の歌人
伊藤左千夫の短歌にしなさい
おりたちてけさの寒さを
おどろきぬ
つゆしとしとと
かきの落ち葉深く
33%

一ノ関忠人

おりたちて今朝の寒さを驚きぬ露しとしとと柿の落葉深く
伊藤左千夫『左千夫歌集』(1920年)

1912(大正元)年11月「アララギ」に発表された、この歌を冒頭にした一連五首は、伊藤左千夫晩年の絶唱と言われる。他の四首も引いておこう。

鶏頭のやや立ち乱れ今朝や露のつめたきまでに園さびにけり

秋草のしどろが端にものものしく生きを栄ゆるつはぶきの花

鶏頭の紅(べに)ふりて来し秋の末やわれ四十九の年ゆかんとす

今朝の朝の露ひやびやと秋草やすべて幽けき寂滅の光

さすがに左千夫と思わせる。この翌年には、脳溢血のため五十年の生涯を閉じることになる。この哀調は圧巻であろう。
引用元:一首鑑賞 » Archives » おりたちて今朝の寒さを驚きぬ露しとしとと柿の落葉深く https://sunagoya.com/tanka/?p=12786

おりたちて 今朝の寒さを 驚きぬ 露しとしとと
柿の落葉深く
                 伊藤左千夫 

(おりたちて けさのさむさを おどろきぬ つゆ
 しとしとと かきのおちばふかく)

意味・・朝、庭に降りみて、思いがけない寒さに驚い
    た。いつのまにか晩秋、初冬の姿に一変した
    庭には柿の落葉が深く散りしき、冷え冷えと
    した朝露にしっとりと濡れている。

    きびしい初冬の自然の姿、万物凋落の姿の寂
    寥(せきりょう)感を詠んでいます。

    これからいっそう厳しい冬が来て草木を枯れ
    つくす。寒さがこたえるようになった自分の
    身体にも、枯葉と同じように衰えを意識させ
    られ、寂しさが湧いて来る・・。
    これからやって来る寒さに耐えなくては・・。

    大正元年、亡くなる前年に詠んだ歌です。
引用元:・おりたちて 今朝の寒さを 驚きぬ 露しとしとと 柿の落葉深く – 名歌鑑賞 https://sakuramitih31.blog.fc2.com/blog-entry-4665.html

が、彼の晩年は寂しいものでした。「アララギ」誌上では、西洋の詩に憧れる若い赤彦や茂吉らと、左千夫との激しい対立が繰りひろげられました。今週取り上げた「おりたちて今朝の寒さを驚きぬ露しとしとと柿の落葉深く」という歌は、寂しい日々を過ごす左千夫が、大正元年(1912年)秋に作った「ほろびの光」という連作(5首)の冒頭歌です。

この「ほろびの光」の第2首以降には次のような短歌が並んでいます。

  鶏頭のやや立(たち)乱(みだ)れ今朝や露のつめたきまでに園さびにけり

  秋草のしどろが端にものものしく生(い)きを栄(さか)ゆるつはぶきの花

  鶏頭の紅(べに)古(ふ)りて来し秋の末や我れ四十九の年行かんとす

これらの歌には、うらがれた晩秋の庭の草々の様子が描かれています。秋の風に吹かれて乱れ立っている鶏頭。秋草のなかにまだ花を咲かせているつはぶき。露に打たれて明るい赤色から黒ずんだ鶏頭の花。ひそやかな庭草の営みを見つめながら、左千夫は「我れ四十九の年行かんとす」という思いに沈んでゆきます。男性の平均寿命が44歳だった当時の事情を考えれば、数え年50歳を迎えようとする左千夫には晩年の深い憂愁があったに違いありません。

「ほろびの光」の最後の1首は次のような歌です。

  今朝のあさの露ひやびやと秋草や総(す)べて幽(かそ)けき寂滅(ほろび)の光

晩秋の朝の露に濡れて光っている草々。その輝きを見ながら、左千夫はそこに「寂滅の光」を見ます。その背後には、左千夫の深い孤独が潜んでいたのです。
引用元:伊藤左千夫の「ほろびの光」 短歌一口講座 露|アート&レビュー|NIKKEI STYLE https://style.nikkei.com/article/DGXBZO36299710X01C11A1000000/

伊藤 左千夫(いとう さちお、1864年9月18日(元治元年8月18日) – 1913年(大正2年)7月30日)は日本の歌人、小説家。本名 幸次郎。

また、1905年(明治38年)には、子規の写生文の影響を受けた小説「野菊の墓」を『ホトトギス』に発表。夏目漱石に評価される。代表作に『隣の嫁』『春の潮』など。この頃、東京帝国大学学生の三井甲之や近角常音が出入りをしていた。常音の兄である真宗大谷派僧侶の近角常観とも知遇を得て、常観が主宰していた雑誌『求道』(求道発行所)に短歌を寄稿する。

1913年(大正2年)に脳溢血のため南葛飾郡大島町の仮寓で死去[1]。戒名は唯真居士。
引用元:伊藤左千夫 – Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BC%8A%E8%97%A4%E5%B7%A6%E5%8D%83%E5%A4%AB