ジオスゲニン


アルツハイマー病を改善する作用
がある、ヤマイモに含まれる成分
ジオスゲニン(答)
21%

富山大和漢医薬学総合研究所(富山市)の東田千尋准教授(神経機能学)らのグループが、ヤマイモなどに多く含まれる「ジオスゲニン」という成分に、アルツハイマー病の症状を改善する働きがあることを発見した。英オンライン科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」に発表した。

 東田准教授は、神経細胞の活性化に効果のある物質を研究する中で、ジオスゲニンに注目。アルツハイマー病の症状があるマウスに1日1回、20日間ジオスゲニンを投与した。その結果、患者に典型的にみられる、神経細胞の軸索という突起の変性が正常に近い状態に戻り、マウスの記憶力に改善がみられた。

 さらに病気の原因となるタンパク質「アミロイドベータ」も約70%減少したという。

 東田准教授によると、原因物質を減らす新薬は研究されているが、変性してしまった神経細胞を戻したり、記憶力を改善させたりする効果はまだ得られていないといい「治療薬開発の可能性が広がった」と話している。〔共同〕
引用元:ヤマイモ成分で記憶力改善 アルツハイマー病に効果  :日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG2901L_V00C12A8CR8000/

日本と世界が、認知症対策に苦慮している。認知症の治療と介護に伴う社会コストは膨大で、患者数は増加の一途を辿る。対策は急がれているが、効果的な治療薬はまだ開発されていない。
認知症を引き起こす疾病のなかでも、アルツハイマー病がもっとも症例が多く、半数以上を占める。富山大学和漢医薬学総合研究所の東田千尋准教授は、他に類を見ないアプローチでアルツハイマー病の治療薬研究に取り組む。手にする武器は、同研究所が誇る和漢の伝統生薬だ。

蘇った神経回路網
続いて東田准教授は、伝統生薬に含まれる化合物が、さらに高い神経回路網修復機能を持つことを発見した。それが、「山薬(さんやく)」と呼ばれるヤマイモ類に含まれる「ジオスゲニン」という成分だ。
「ジオスゲニンを1日1回20日間、アルツハイマー病を発症したマウスに注射で投与したところ、マウスの記憶が加味帰脾湯よりも顕著に改善されました。さらに、マウスの脳内を調べてみたところ、アミロイドβの蓄積と神経原線維変化がともに減少し、損傷した神経回路網が再構成されていることも確認できました」
この成果を2012年7月に発表すると、テレビや新聞などで、アルツハイマー病治療に光が見えたと数多く報じられた。伝統生薬の持つ力に、世の中も注目し始めた。
ここでひとつ補足しておくと、ヤマイモ類に含まれる「ジオスゲニン」の薬効は、普段の生活で食べる程度ではほとんど見込めないという。東田准教授によれば、「1日10kgヤマイモを食べても効果が出るかは分からない」とのことだ。

和漢の伝統生薬がアルツハイマー病改善につながる効果を実証した東田准教授は、これまでの研究成果を応用し、新たな研究テーマにも着手する。損傷した脊髄を修復する化合物を伝統薬物のなかから探索する研究を始めたのだ。
「脊髄は、背骨の中にあって脳と体をつなぐ中枢神経です。脊髄を損傷すると、脳からの司令が末端に行き届かなくなり、あるいは末端の感覚が脳に行き届かなくなり、運動機能が麻痺します。脊髄の神経細胞も、脳の神経細胞と同様、修復・再生されることはなく、脊髄損傷においても、神経細胞をいかに修復させるかが治療のカギを握ります」
そこで、脳の神経細胞修復に効果のあった「補気薬」と同等の伝統生薬に狙いを定め、損傷した脊髄の神経細胞を修復可能な化合物の探索を始めた。
その結果、東田准教授は伝統生薬に含まれる成分をもとに新たな化合物を生成し、損傷した脊髄を修復する効果があることを確かめた。
「インドの伝統医学アーユルヴェーダでは、『アシュワガンダ』と呼ばれる生薬が、漢方の補気薬のように滋養強壮剤として使われてきました。その成分を分析すると、神経細胞を修復・再生させる生理活性を持つことが明らかになりました。その成分をもとに、新たな化合物『デノソミン』を合成しました」

東田 千尋(とうだ ちひろ)
富山大学 和漢医薬学総合研究所
神経機能学分野 准教授
1989年北海道大学薬学部製薬化学科卒業、1994年に同大学大学院薬学研究科博士後期課程薬学専攻を修了し博士(薬学)を取得。1995年富山医科薬科大学(現・富山大学)助手に就任し、1997年に米国国立衛生研究所に短期留学。2005年、富山大学と富山医科薬科大学、高岡短期大学の3大学統合に伴い、富山大学和漢医薬学総合研究所助手、2007年に同研究所助教、2010年より現職。2006年に日本神経化学会最優秀奨励賞、2014年に和漢医薬学会学術貢献賞、2016年に日本薬学会学術振興賞を受賞。
引用元:富山大学 和漢医薬学総合研究所 | 国立大学附置研究所・センター長会議 http://shochou-kaigi.org/interview/interview_16/